●住宅は文化の基である。

2008/07/17(木) 未分類
私は「住宅」を建築する仕事をしながら、常に自問自答します。

『私たちの創る「住宅」が日本の文化的価値を高めることに貢献しているのだろうか』と。

私は生まれた時から小さな工務店の大工の息子で、親父の「かんな」がけをする後ろ姿を見ながら育ちました。

今その親父の築き上げてきた工務店を引き継ぐ立場になり、「地域工務店」としての使命とは何かを真剣に考え続けてきたような気がします。

いろいろなトライアルを繰り返しました。「高気密高断熱」「外断熱の家」「ローコスト住宅」「2×4工法の家」・・・。

その問いかけの結論が「家づくりは日本文化の基」という言葉です。

その一番分かりやすい例をご紹介しましょう。

以前、紫波中央駅前で展示場を公開した際に、岩谷堂箪笥の藤里木工さんに家具や箪笥等をお借りしたことがあります。職人として活躍されている及川社長の息子さん達に積極的に協力していただき、とても助かりました。

結果として、岩谷堂箪笥の風格と、無垢の木と珪藻土仕上げの家が良く溶け込み、家のテイストを数段引き上げることに成功、見学会は大成功でした。

この時見学されたお客様は、その後「ゆい工房」で家を建てた際に、藤里木工さんで岩谷堂箪笥を購入された方が何人もいます。

その時、息子さん達に聞いた話はとても印象的でした。

伝統工芸である岩谷堂箪笥を製作していて、箪笥を置いて映える「家」そのものが少なくなってきているというのです。

たしかに、作家の創った「陶器」でも、無垢の木のテーブルにおき、漆喰壁の家にあってこそ、その価値が高まります。

日本の先人が築いた文化的な遺産を、その器として守る立場にあるのが実は「家」なのです。

その後、ある建築家と出会い、家づくりに対する基本哲学を学び、現在に至っています。

「家」を消耗品にせず、「資産」にしようと思うならば、伝統的文化を守る器であり、その街並みの表情をつくる建物でありたいと常に考えています。

まだまだ、精進が足りません。しかし、これが「ゆい工房」の基本モチーフなのです。